■なおることについての記述
■「リルテック」
■ラジカット
■遺伝子医療/ES細胞/iPS細胞
■民間療法
■ALSとHGF [別頁]
■なおることについての記述
◆1973 「新聞で、四十八年度の難病対策として、私と同じ病気名が、特定疾患に追加される記事を読んで、ほっとすると同時に、これから研究が始まるのでは、自分の病気をなおすには、まにあいそうもないような気がしてきた。
一世紀も前からあばれまわっている病気が、厚生省のいう五年をめどに対策を講じようとしてみても、おいそれとはその処方が探れるとは思われない。かりに、五年後に治療法が見つかったとしても、この病気の平均寿命と、私自身の病気の進行速度を考えてみると、とてもまにないそうにもない。」(川合[1987:154])
◆1975年頃 「日本でALS治療に多岐にわたる薬剤が試みられたことが…厚生省研究班の報告にあります。副腎皮質ホルモ� ��、タンパク同化ホルモン、グルカゴンATP+ニコチン酸、L−DOPA、ペニシリン、グアニジン、CDP−コリン、抗コリンエステレース酸、成長ホルモン、膵エキス、高圧酸素、抗結核薬、塩酸メクロフェキセート、金属キレー(p.7)ト剤などです。/しかし、いずれも少数の患者さんを対象とし治療経験例の報告で、ALSの進行を抑制したり、長期予後を改善させたりできるものではありませんでした。」(pp.7-8)
中野 亮一・辻 省次 20001001 「気の遠くなるような治療研究の積み重ね」,『難病と在宅ケア』06-07(2000-10):07-10
◆1993年 「堰が切れてワーッと進み始めているような気がしますので、ALSの治療に関してかなり確実なことがわかるのも、あまり遠い将来のことではないような気がします。」
「アメリカにおけるALSの治療研究」 三本(みつもと)博『JALSA』028号(1993/08/31)p.21
◆1993年 「知本さんのかかっている筋萎縮性側索硬化症もこの難病の一つで、現在なお患者さんの期待を背に鋭意究明の努力が続けられ、今一歩で解決という段階に来ている。」(知本[1993:4]) 知本さんの戦友として 国立療養所中部病院院長(前鹿児島大学学長) 井形昭弘pp.3-7 執筆は一九九三年五月)
◆1994年 「柳沢先生のご講演にもありますよ� ��に、今、ALSの研究が世界的規模で進められていて、治験薬も次々と試されつつあります。この病気の原因が究明されるのも決して遠くはないと信じて、頑張ってゆこうではありませんか。」(編集後記)
『JALSA』032号(1994/07/30)
◆日本ALS協会の基金の多くは原因究明とそして治療法の開発のための研究に対して…されている。(各年度の件数。金額。)
◆「特定疾患調査研究事業を22年ぶりに見直し」
『難病と在宅ケア』02-01(1996-04):21
◆立岩 真也 20041115 『ALS――不動の身体と息する機械』,医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon]/[kinokuniya] ※
「第2章 まだなおらないこと 1 今のところなおらない これから見ていく告知をめぐる困難にしても、また呼吸器を付けるとか付けないといったことも、安楽死にしても、みなALSが今のところなおらない病気であることによっているとは言える。だからなおるようになればよい。それはその通りだ。ALSが治療可能になることへの期待は強く、その期待は多く語られる。ときには自分が新しい薬の治験を受けさせてもらえない苛立ちが語られる。
私もなおす方法が現れると思う。近代医学・医療は特定病因論を前提にするとされる。これは特定されない病の場合には効力が弱いということだが、特定されれば一定の力を発揮しうるということでもある。なぜALSが起こるのか、その原因はわかっていない。しかし何が起こっているかははっきりしている。側索(そくさく)とは脊髄の中の錐体路 で、大脳皮質から手足の筋肉を動かす命令が通る通路である。この側索の髄鞘(ずいしょう)の消失・脱髄が起こり、脊髄の運動神経、前角細胞が消失してしまう。そして筋肉が萎縮していく。
起こっていることは特定されているのだから、やがて少なくとも直接の原因、症状発生の機序はつきとめられるだろう。その特定によって治療法が見つかるだろう。あるいは原因解明に先んじ、様々な処方のいずれかが、時にその機制はよくわからないまま有効であることが明らかになるだろう。
しかしこれまでのところ治療法はなく、今はなおらない。様々な病がそうであったように、あるように、これまでも様々な治療法が試みられてきた。また研究がなされてきた。
【73】 一九七三年。《新聞で、四八年度の難病対策として、 私と同じ病気名が、特定疾患に追加される記事を読んで、ほっとすると同時に、これから研究が始まるのでは、自分の病気をなおすには、まにあいそうもないような気がしてきた。/一世紀も前からあばれまわっている病気が、厚生省のいう五年をめどに対策を講じようとしてみても、おいそれとはその処方が探れるとは思われない。かりに、五年後に治療法が見つかったとしても、この病気の平均寿命と、私自身の病気の進行速度を考えてみると、とてもまにないそうにもない。》(川合[1987:154]。初版は川合[1975])
【74】 七五年頃。《日本でALS治療に多岐にわたる薬剤が試みられたことが[…]厚生省研究班の報告にあります。副腎皮質ホルモン、タンパク同化ホルモン、グルカゴンATP+ニコチン酸、L-DOPA、ペニシリン、グア ニジン、CDP-コリン、抗コリンエステレース酸、成長ホルモン、膵エキス、高圧酸素、抗結核薬、塩酸メクロフェキセート、金属キレート剤などです。/しかし、いずれも少数の患者さんを対象とした治療経験例の報告で、ALSの進行を抑制したり、長期予後を改善させたりできるものではありませんでした。》(中野・辻[2000:7-8])
ALSの人の集まりでは医師が講演に呼ばれ、どこまで解明が進んだといった話をすることが多い。
【75】 九三年。《堰が切れてワーッと進み始めているような気がしますので、ALSの治療に関してかなり確実なことがわかるのも、あまり遠い将来のことではないような気がします。》(三本[1993:21])
【76】 九三年。《知本さんのかかっている筋萎縮性側索硬化症もこの難病の一つで、現在なお� �者さんの期待を背に鋭意究明の努力が続けられ、今一歩で解決という段階に来ている。》(井形[1993:4]。井形は知本[42]の入院先の国立療養所中部病院の院長)
【77】 九四年。《柳沢先生のご講演にもありますように、今、ALSの研究が世界的規模で進められていて、治験薬も次々と試されつつあります。この病気の原因が究明されるのも決して遠くはないと信じて、頑張ってゆこうではありませんか。》(『JALSA』32の編集後記。講演は柳沢[1994]、[114]に一部引用)
【78】 九五年。《すべての面において一〇年前とは明らかにこの方面は進歩していると思います。また、今後わずかの間に驚くような、うれしい局面が展開する予感がしています。》(糸山[1995:13]。日本ALS協会総会記念講演の結語)」(立岩[2004])
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■「リルテック」
◆『JALSA』035号(1995/00/00)
欧米でのリルゾールの治験結果出る
◆『JALSA』042号(1997/12/22)
□ 「小諸介護研修合宿 於 長野佐久市ホテル・ゴールデンセンチュリー 平成九年六月二八・二九日
―質疑応答―
二日目「懇談会」より(前日配布の質問票をもとに)
第一部
一。治療薬について
Q。リルゾールが韓国から入手できると聞くが、それについての考えを聞きたい。
A。協会として、来年度には日本でも認可されるよう、厚生省に要請していく。」(p.28)
◆1998/12/02 中央薬事審議会常任部会議事録
実名は隠されている委員は冒頭次のように言う。「日本での症例数は、患者さんの会その他の話では恐らく年間2000〜3000人ぐ� ��いの新しい患者ですが、実際にいったん発症すると非常に予後がよくなくて、大体一年から一年半くらいで亡くなる非常に進行性の病気でありまして、やはりそれに対する治療が必要であるが、薬がないという悲惨な状況であろうと思われます。」
「結論的には私も賛成です。ただ、今はALSの場合だから余り有効性がはっきりしないけれども、ほかに薬がないからやむを得ず承認してしまおうということだと思います。」
◆『JALSA』045号(1998/12/10)
「リルゾールの輸入漸く承認
12月2日、厚生省の中央薬事審議会常任部会は、ALSの医療機関用の治療薬として、「リルゾール」(アイルランドで製造)の輸入を承認しました。
欧米では、1996年から発売、使用されているこの「リルゾール」の薬効は、場合により、ALSの進行を約3か月抑制する効果がある程度といわれている一方、肝障害といった副作用の問題もあり、とうてい満足する訳にはまいりませんが、何はともあれ初の治療薬として承認されたことは喜ばしい限りです。
いつから、どのようにして、利用できるかですが、これから薬価等が審議されるため、まだ明らかではありません(順調に手続きが進めば、明春からとの観測情報)。
事務局としては、現� �個人輸入に多額を投じている方が少なくないことでもあり、厚生省と連絡を密にして、詳細確報の把握に努める所存です。」(p19)
◆佐藤 猛(国立精神・神経センター国府台病院名誉院長) 1999/03/09
「ALSの治療薬:リルテックについて」
『JALSA』(1999/04/08)046号:04
「筋委縮性側策硬化症(ALS)の治療薬剤として、今回リルテック錠50(一般名:リルゾール、販売会社:ローヌ プーラン ローラー)が保険薬として認められ、3月末には発売される見込みとの発表がありました。以前から患者さんの問い合わせが多く、期待しておられた方もおられると思いますので、文献とメーカーから得た資料をもとに、リルテックについて説明いたします。[…]
進行が止まったり、筋力が元のように回復することはありません。従って、この薬に過度の期待を寄せることはできません。ALSでは、他に有効な薬剤は未だなく、欧米でリルテ� ��クが認可されているのなら、効果が僅かでも服用したいと希望する患者さんが多いと聞きます。発売後の調査の中で、日本におけるこの薬の有効性を確認する、という条件で、厚生省が認可を与えたとのことです。」(佐藤[1999])
◆後藤忠治
パソコンと呼吸器・・・・1999年(平成11年)
「川島先生より[リルテック]の個人輸入の説明を受ける。「過剰に期待しないように」との説明もあったがその場で手続きをお願いする。ほんの少しでも可能性があれば験してみたい。四月から保険で服用できるとの事だがそれまでまてない。
後日手続きに時間がかかり三月にずれ込むとの連絡が入りそれならば四月まで待った方がいいという事になり、個人輸入は見送る事にする。
四月。待ちに待った[リ ルテック]。過剰に期待しないようにとの説明であったがどうしても期待してしまう。副作用の説明もあったがそんな事は眼中に無い。ただひたすら効く事を祈るだけです。」
◆『JALSA』047号(1999/06/12)
□「平成11年度総会開く
〔…〕
一、松本会長挨拶
[…]
この四月からALS治療薬としてリルゾールが認められましたが、日本の治験成績から見るとあまり芳しくないようです。それでも特効薬を待ち望んだ患者にとっては一つの光明であります。これをバネに原因、治療法の研究のスピード化を厚生省にお願いしなければなりません。
そして、本当にALSが治る特効薬が開発されるまでは、せめて療養環境を整備して、安心して療養生活が送れるようにと、強く訴えつづけたいと思います。」
� �…]
二、議事
(一)平成十年度活動報告
〔…〕
○次に対外面では、@初のALS薬品リルテックの輸入が承認され、この四月から適合する患者さんに処方されることとなりました。」(p.7)
◆日本神経学会 2002 「ALS治療ガイドライン」より
「X.薬物療法(リルゾール)
ALSに対するリルゾール(リルテックR)治療の報告
ALSに対するリルゾール治療の報告は国内外で120以上の論文がある.ALS全体に対する効果についての報告のほか,投与量と効果の関係,特定症状に対する効果,副作用,患者の同意,などについての報告があるが,総説も多い.
効果
欧米で施行された最初の臨床試験(155例,Bensimon et al. 1994)では,ALS患者の生存期間が延長し,特に球型でより明らかであった.また筋力低下の進行速度が遅延したとの知見も得られた.その後に実施されたより大規模の試験(959例,Lacomblez et al. 1996a)では,球型・四肢型ともに生存期間の有意な延長が認められた.ただし徒手筋力やNorris scaleなどの機能評価では増悪速度の遅延は確認できなかった.同じ研究グループによるメタアナリシス(Lacomblez et al. 1996b)では投与量と効果の関係を検討し,一日量50mgよりも100mg,200mgでより有効であった.生存率が80%,70%,60%になるまでの期間をみると,リルゾール100mg・200mg投与でいずれも約3ヶ月延長した.同じ症例を用いたADLに注目した重症度解析(Riviere et al. 1998)では,重症者には明らかな効果がなかったが,軽症例では重症化への進行が遅れたという結果が得られた.
一方,日本人患者を対象にした臨床試験(195例,柳澤,他 1997a)が行われたが,生存期間は全体としても,また臨床型別・投与量別に検討してもplacebo群との間に全く差はなく,有意な効果は認められなかった.欧米・日本の不適当症例を除いた100mg投与の全患者を対象にしてメタアナリシス(828例,柳澤,他 1997b)が行われ,生存期間の有意な延長が確認された.ただし重症度別に解析すると,high risk群でのみ生存期間の延長が確認された.
いずれの臨床試験も一次評価項目は死亡や気管切開までの期間などであり,実質的な生存期間が評価された.試験結果の違いについては,患者の重症度や評価の感受性などの問題のほか,治療・ケア体制,家族の対応,などの要素も考慮に入れる必要がある.
副作用
すべての臨床試験を通じて,重篤な副作用はみられない.比較的頻度の高いものとして,悪心,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状,眠気,無力感,めまい,錯感覚などの神経症状,検査では肝機能障害(GOT,GPT),貧血などが報告されている.臨床試験に参加した症例の最も多いLacomblez et al.の報告(959例)を下記に示すが,その他の報告でもほぼ同様の結果である(柳澤,他 1997a,Roch-Torreiles et al. 2000,Pongratz et al. 2000,Scelsa et al. 2000).
消化器症状はplacebo群でも数%〜10数%の頻度でみられたが,50mgでは殆ど変化がなかった.悪心,嘔吐は100mgでplacebo群に比べて増加(それぞれ約20%,5%),200mgでも差はなかった.食欲不振,下痢は200mgで増加したが10%未満である.
神経症状は傾眠,しびれが100mg以上で出現し,200mgでは更に増加したが,200mgでも数%以下であった.めまいは200mgで10数%みられた.
検査所見ではGPT増加(正常上限の5倍以上)は50mgで5%,100mg 7%,200mg 12%と投与量と共に増加した.GOTには明らかな増加(正常上限の3〜5倍以上)は見られなかった.貧血(Hbで10g/dl以下)は50mgで1%以下,100mg 3%,200mg 6%とやはり投与量と共に増加した.
患者の同意
リルゾール治療についての患者の同意の問題が報告されている(46例,Rudnicki 1997).リルゾール治療について,寿命延長効果は平均3ヵ月であること,筋力・呼吸などの進行は変わらないこと,さらに必要経費,副作用について説明したあと,治療に同意するかどうかが調査された.その結果,治療に同意した人17例(37%),同意しなかった人29例(63%)であった.同意しなかった人の第一の理由は効果が乏しいことだった.
調査は米国で行われたもので,病名告知についての日米の差を考慮する必要があるが,リルゾールの効果がかなり限定されたものであること,重篤とはいえないが副作用は起こる可能性があることから,リルゾール治療についての患者の同意は必要であろう.
リルゾール治療のガイドライン
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