2012年4月29日日曜日

脊椎・脊髄外科班 | 治療内容のご案内 | 藤田保健衛生大学整形外科


スタッフ

 中井定明教授、志津直行講師、花村俊太朗講師、鬼武宏行助教、冨永整助教が中心になり、診療を担当しています。当科は日本脊椎脊髄病学会から脊椎外科指導育成機関に認定されています。脳神経外科内の脊椎脊髄グループとともに、藤田保健衛生大学病院脊椎脊髄センターを運営しています。それぞれが得意な分野を受け持ち、協同して診療に当たっています。

専門とする病気

腰部脊柱管狭窄症
腰椎分離症・腰椎すべり症
腰椎椎間板ヘルニア
脊柱側弯症・脊柱後弯症などの脊柱変形
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症
後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症
脊椎腫瘍
脊髄腫瘍
リウマチ性脊椎疾患

基本的な治療方針

 病診連携や病々連携を大切にして治療に当たっています。私たちは、開業の先生方に診ていただき、入院治療や手術が必要な患者様を引き受けて治療を行っています。主だった病気は自然経過がほぼわかっていますので、まず、今までのデータを説明いたします。腫瘍班や関節班にも関連する病気の場合は、整形外科カンファレンスを通してそれぞれの分野の専門家に参考意見を聞いて治療方針を決めます。

 入院治療は、ブロック注射や点滴による保存的治療(手術以外の治療法)で症状が軽くなる場合が多い病気には、患者様と御家族に治療方針を説明した上で、保存的治療をまず、受けていただきます。期待どおりに症状が軽減しない場合や、社会的な状況から治療に時間を割けない場合には手術に移行することになります。

 症状が進行することが明らかな病気や、現在すでに日常生活動作が障害されている場合には手術をお勧めいたします。病気ごとに、手術の内容と危険性、手術で得られる効果を説明した文書を用意してありますので、その文書に基づいて説明いたします。

 脊椎疾患の多くは年齢によって生じる病気です。これらの病気の特徴は、じっとしていれば差ほどの苦痛を感じませんが、いざ活動しようとすると痛み・シビレ感などがひどくなって人の活動性を奪うことです。その結果、からだの筋肉、特に下肢の筋力が弱くなり、歩行能力が低下します。その結果、糖尿病や高血圧などの、運動を必要とする内科の病気に立ち向かうことが困難になり、からだが衰えます。この悪循環を断ち切る方法が手術です。

 手術の危険性は二つに分けてお考えください。手術を受ける部位の危険性と、麻酔や手術の侵襲などによる全身の危険性です。手術を受ける部位の危険性は、その手術に慣れた医師や施設を選ぶことにより低くすることができます。全身の危険性は、高血圧や心臓の病気などの循環器疾患、糖尿病などを普段から運動などを通じてコントロールしておき、いざという時に備えておくことで低くすることができます。これらのことから、脊椎脊髄の病気のために歩行能力がすでに低下している場合や、確実に進行しつつある場合は、背骨の手術をお勧めする大きなポイントになります。

 手術方法はできる限り、からだへの影響が少ない方法(最小侵襲手術・Minimally invasive surgery)を採用しています。手術用の顕微鏡などを積極的に利用して、手術の規模を小さくするように努めています。からだの中で背骨が果たす役割は二つあります。脳から全身にはりめぐらされた神経の入れ物としての機能と、からだを支える機能です。神経の入れ物としての機能が損なわれた場合には除圧手術が必要になります。他方、からだを支える機能が損なわれた場合には支える機能を再建する手術が必要になります。これらの両方を使い分けて手術を行っています。

自己血輸血

 私たちは東海地方における自己血輸血を推進する中心的な役割を果たしてまいりました。計画的な手術で輸血が必要な場合には、原則的に自己血で対応しています。そのうちほとんどは、手術前に自己血を採血しておく貯血式自己血輸血ですが、そのほかにも、手術直前に麻酔ののちに貯血する希釈式や、手術中に出血した血液を回収する術中回収式を必要に応じて利用しています。

脊髄モニタリング

 手術による神経麻痺が生じる危険性がおおきな手術では、原則的に脊髄モニタリングを使用しています。特に背骨の変形を矯正する場合や、脊髄がひどく圧迫されている状態を除圧する手術では、モニタリングを使用して手術中に脊髄麻痺が生じる危険性を少なくするように努めています。

低血圧麻酔

 出血量が多いと予想される手術では、手術中の血圧を下げて出血量を減少させます。

クリニカルパス

 治療を受ける患者様と、治療する医療従事者が共有するスケジュール表で、手術が決まった時点で患者様にお渡ししています。クリニカルパスには手術前後の治療内容・点滴の内容など・安静度・入院期間などが患者様にわかりやすく記載されています。医師・看護師は患者様にお渡ししたスケジュール表にのっとって治療を進めてまいります。

皮膚縫合

 皮膚の表面に縫い跡が残らないように皮膚の中を縫い、傷跡が目立たないように努力しています。

顕微鏡視下の腰椎椎間板ヘルニア摘出(Micro Discectomy, MD)

 腰骨の椎間板は背骨と背骨の間をつないでクッションの働きをしています。しかし、年齢を重ねることや、腰部への負担が大きすぎることにより、椎間板は次第に機能を果たせなくなってきて(変性して)、一部の椎間板は破綻してきます。椎間板ヘルニアは椎間板の一部が後ろ、あるいは横後ろ、稀には横に出っ張った状態で、20歳代から40歳代の人に多く発症します。

 椎間板ヘルニアが後ろあるいは横後ろ、稀には横に出っ張って神経を圧迫すると、その神経が支配している領域の痛み・しびれ・筋力低下などの症状が引き起こされます。この手術の目的は、その出っ張ったヘルニアを取り除いて、腰痛や臀部痛・下肢の痛み・しびれを軽減させることです。

 手術用の顕微鏡で拡大して見ることにより細かい構造を見やすくなります。そのため私たちは現在、手術用の顕微鏡を使って手術を行っています。顕微鏡を使う手術は、内視鏡の手術と比べてもキズの大きさや侵襲の大きさはほとんど変わりません。

 手術のキズは、腰のまん中に2から4cmの長さで縦にできます。その後の手術操作は、ふつうは症状のあるがわから行います。右あるいは左がわで背骨の後ろにある筋肉をよけて背骨の後ろの部分を見えるようにします。背骨のうしろの部分を一部削ります。背骨と背骨の間に黄色靭帯という靭帯がありますので、その靭帯を取り除いて硬膜管と神経根が見えるようにします。硬膜管は神経の本幹で、神経根は本幹から分かれて下肢などに行く枝です。

 神経根を外側から内側へ押してよけると神経根のおなかがわにヘルニアの出っ張りが見えます。そのヘルニアを道具でつまんで取り除きます。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。

経皮的髄核摘出 (Percutaneous Nucleotomy, PN)

 腰骨の椎間板は背骨と背骨の間をつないでクッションの働きをしています。しかし、年齢を重ねることや、腰部への負担が大きすぎることにより、椎間板は次第に機能を果たせなくなってきて(変性して)、一部の椎間板は破綻してきます。椎間板ヘルニアは椎間板の一部が後ろ、あるいは横後ろ、稀には横に出っ張った状態で、20歳代から40歳代の人に多く発症します。


大きな脂肪内臓の重量損失

 椎間板ヘルニアが後ろあるいは横後ろ、稀には横に出っ張って神経を圧迫すると、その神経が支配している領域の痛み・しびれ・筋力低下などの症状が引き起こされます。この手術の目的は、その出っ張ったヘルニアの根元の部分をとることにより減圧させて、腰痛や臀部痛・下肢の痛み・しびれを軽減させることです。

 この手術は局所麻酔でおこなわれます。神経を圧迫しているヘルニアの根元に空間を作ってヘルニアを還納させることにより症状を軽減させることが目的です。氷山の水の中にある部分を削り取って、空中にある部分を小さくすることに似ています。

 ヘルニアのあるほうを上にして横向きに寝ていただきます。腰とひざを曲げて背中を丸めるようにして寝てください。

 局所麻酔をしたのち、腰の横を5mmほど切って細いガイド針を刺入します。やや太めの針を上にかぶせる操作を繰り返して針を太くしたのち、直径4-5mmの外筒を設置します。その外筒を通して椎間板の真中近くの髄核組織を摘出します。当院では摘出方法はレーザーを使用しないで、パンチでつまみ取る方法を採用しており、健康保険が適応されます。

 通常は手術操作にそれほど痛みは伴わず、10歳代(最年少は12歳)の患者さんもこの手術を受けています。

 普通の場合、手術の当日から歩行できます。

腰椎後方除圧手術(拡大開窓・椎弓形成・椎弓切除)

 腰部脊柱管狭窄症は、椎間板が体を支えきれなくなって「お餅」を上下から押しつぶしたようになった結果、後ろに出っ張って椎間板の後ろにある神経を圧迫した状態です。椎間板の高さが減ることにより、神経の後ろにある黄色靭帯という名の靭帯がたるんで神経を後ろからも圧迫します。

 腰部脊柱管狭窄症では神経が圧迫される結果、その神経が支配している臀部や下肢の痛み・しびれ・筋力低下などの症状が引き起こされます。重症になりますと排尿障害や肛門周囲の感じがおかしくなります。

 腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状は、まっすぐに立った状態で20~数100m歩くと足の痛みやしびれなどの症状が出てきて歩けなくなり、椅子に腰を下ろす動作や腰を曲げて休むことにより症状が軽くなり、また、歩けるようになる症状です。「間欠は行」と呼ばれる症状です。これは狭窄がある部位を前に曲げることにより神経の圧迫が減ることによります。したがって御本人は自転車ならいくらでも乗れるとか、スーパーへ買い物に行ったときにカートを押せばいくらでも歩けるなどの状況を、よく自覚していらっしゃいます。これらはすべて、狭窄がある背骨の間を前に曲げていれば神経の圧迫が少なくなることの現れです。

 この手術の目的は、腰部脊柱管狭窄がある背骨の間で骨や靭帯を取り除いて腰痛や臀部痛・下肢の痛み・しびれを軽減させることです。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。

後方腰椎椎体間固定(Posterior Lumbar Interbody Fusion, PLIF)【ぺディクルスクリュー固定】

 腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板症: 椎間板ヘルニアは椎間板の一部が後ろ、あるいは横後ろ、稀には横に出っ張って神経を圧迫した状態です。その神経が支配している領域の痛み・しびれ・筋力低下などの症状が引き起こされます。椎間板が体を支える力を保っている場合にはヘルニアを摘出する手術で済みますが、椎間板が既に体を支える力を失った場合には、椎間板を骨に入れ替えて体を支える力を持たせる必要があります。

 椎間板が支える力を失って腰痛などの症状をひき起こしているが、ヘルニアにはなっていない状態を椎間板症と呼んでいます。

 椎間板の変性があまりにも進行しますと餅を上下につぶしたような形になり、椎間板全体が後ろに出っ張って神経の通る管が狭くなった状態になり、脊柱管狭窄症と呼ばれます。変性すべり症は、背骨がずれたことにより脊柱管が狭くなった状態で、脊柱管狭窄症に含まれます。圧迫される神経により足の痛み・しびれ・足首や足の指の筋力低下・会陰部のしびれ・排尿障害・歩行障害とくに間欠性跛行などの症状が引き起こされます。

 腰椎分離症、腰椎分離すべり症・腰椎形成不全性(先天性)すべり症・腰椎圧迫骨折による神経圧迫などにも、この手術が行われます。

 椎間板の支える力が低下し、さらに背骨の後ろにある関節(椎間関節)も支える力をなくしますと、背骨がずれる病気が起こります。腰骨がずれる病気を腰椎すべり症と呼びます。背骨がずれると、背骨の中にある神経を通す管が食い違ってしまう結果、脊柱管狭窄と同じ状態になります。

 後方腰椎椎体間固定(PLIF)の目的は、椎間板ヘルニア、神経の癒着、脊柱管狭窄症、腰骨のすべりによる脊柱管狭窄症などによる症状を軽減させることです。

 腰骨の機能は神経を中に包んで保護する機能と、体を支える機能の二つに分けられます。神経を保護する機能が損なわれた時には、神経を圧迫している骨や椎間板を取り去れば病気は解決します。しかし、体を支える機能も損なわれますと、支える機能も再建しなければなりません。この手術法は、両方の機能が損なわれたときに役に立ちます。

 椎間板を切除した部分には、すでに切り取った後ろの背骨の部分(自家骨)を細かくして、金属あるいは合成樹脂製の箱型のケージに入れて上下の背骨(椎体)の間に打ち込んで圧着させます。手術部位の骨だけでは足りない場合には自分の骨盤から取った骨や、銀行骨(亡くなった方から頂いた骨)を移植します。

 ペディクルスクリュ-はチタン合金製のネジ釘とロッド(棒)ですが、骨癒合率を高めるために有用です。

 普通の場合、手術の翌々日から歩行できます。

腰椎の局所的後弯化手術(X-stop)

 腰部脊柱管狭窄症は、椎間板が支えきれなくなって「おもち」を上下から押しつぶしたようになった結果、後ろにも出っ張って椎間板の後ろにある神経を圧迫した状態です。椎間板の高さが減ることにより、神経の後ろにある黄色靭帯という名の靭帯がたるんで神経を後ろからも圧迫します。

 腰部脊柱管狭窄症では神経が圧迫される結果、その神経が支配している臀部や下肢の痛み・しびれ・筋力低下などの症状が引き起こされます。重症になりますと排尿障害や肛門周囲の感じがおかしくなります。

 腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状は、まっすぐに立った状態で20~数100m歩くと足の痛みやしびれなどの症状が出てきて歩けなくなり、椅子に腰を下ろす動作や腰を曲げて休むことにより症状が軽くなり、また、歩けるようになる症状が出ます。この症状は「間欠は行」と呼ばれます。これは狭窄がある部位を前に曲げることにより神経の圧迫が減ることによります。したがって御本人は自転車ならいくらでも乗れるとか、スーパーへ買い物に行ったときにカートを押せばいくらでも歩けるなどの状況を、よく自覚していらっしゃいます。これらはすべて、狭窄がある背骨の間を前に曲げていれば神経の圧迫が少なくなることの現れです。

 この手術の目的は、腰部脊柱管狭窄がある背骨の間を前に曲げて、腰痛やでん部痛・下肢の痛み・しびれを軽減させることです。

 手術のキズは、腰のまん中に4-5cm程度の長さで縦にできます。自分で背中を触ると出っ張った背骨を触れますが、これは棘突起と呼ばれています。その棘突起の間にX-stopを挟んで、背骨の後ろの部分を拡げて脊柱管狭窄を緩和するようにします。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。


目の周り頭痛救済

腰椎前方固定

 年齢を重ねることや、腰部への負担が大きすぎることにより、椎間板は次第に機能を果たせなくなってきて(変性して)、一部の椎間板は破綻した結果、体を支えられなくなります。また、背骨に細菌がついて化膿した場合や、背骨が腫瘍により侵された場合にも背骨が体を支えられなくなります。このような病気の場合には背骨や椎間板を骨や金属などで置き換えて体を支える力を作ることが必要になります。その手術をおなかの横から行うのが腰椎前方固定手術です。

 普通の場合、手術の翌々日から歩行できます。

頚椎後方除圧手術(頚椎椎弓形成・頸椎椎弓切除)

 首の骨(頚椎)の働きは大きく分けると二つあり、頭を支えて、しかも首が動くように保つ支持機能と、神経の通り道としての機能に分けられます。頚椎後方除圧手術(頚椎椎弓形成手術や椎弓切除手術)は、支持機能は問題がない状態で、神経の通り道としての機能が損なわれた場合に、通り道を拡げる手術です。

 神経の通り道が狭くなる病気として、椎間板が後ろに出っ張る椎間板ヘルニアが最も代表的ですが、そのほか脊柱管狭窄症や、後縦靭帯骨化症、首の骨がずれて神経を圧迫する病気などがあります。

 首の神経は脊髄と呼ばれる本幹と、神経根と呼ばれる枝に分けられます。脊髄が首の部分で圧迫されると、それらの領域のしびれや感覚障害をはじめ、歩行障害や排尿・排便障害が起こります。交通事故などで首の骨が折れて脊髄が傷つくと車いすが必要になることをお考えください。

 神経根は脊髄から分かれて、腕や手などに行く神経です。神経根が圧迫されると、その神経が行っている部位の激しい痛み・しびれ、感覚障害、運動障害が起こります。

 この手術は、後方から脊柱管を物理的に拡げて脊髄や神経根への圧迫を取り除くことにより、上肢の症状や脊髄症状を軽減させることが目的です。

 手術用の顕微鏡を使用して手術を進めます。顕微鏡を使用することにより細かな組織が見やすくなり、見落としすることが少なくなります。

 椎弓形成では椎弓を真ん中で切ります。椎弓を真後ろで左右に切り離したあと、椎弓の左右で溝を掘ります。左右で溝を掘って薄くした骨はたわみますので、左右の椎弓を外側にたわませて開いて、その間にセラミック製のスペーサーを挟んで結びつけ、脊柱管を拡大します。

 特殊な椎弓形成手術として"白石式"と呼ばれる方法があります。頸椎の筋肉をできるだけ傷つけないように考えられた方法で、狭い範囲の除圧で済む場合に使われます。

 筋肉を頸椎からはがさないで、左右の筋肉を頸椎に付けたまま左右に開いて内部の操作を行います。筋肉の損傷が少なく、手術後の痛みが軽いので良い方法ですが、神経圧迫の程度と圧迫部位により利用できる場合とできない場合があります。

 椎弓切除は頸椎の後方部分を取ってしまう手術です。ふつうの場合、頸椎の後方部分をとってもすぐにグラグラになることはありませんし、逆に、その心配がある場合には、この手術方法は使いません。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。

頚椎疾患に対する「筋肉を温存する低侵襲手術」

 頚椎は脊髄(神経)という大切な組織を保護する容器であると同時に、5kg以上の重さの頭を支えてかつ動かしています。

 この働きには当然筋肉が必要で、頚椎の場合は、特に棘突起(きょくとっき)や椎弓(ついきゅう)といった頚椎の後ろ側の骨に直接ついている筋肉が重要です。

 従来の日本の殆どの施設で行われていた手術法では、首の骨まで到達するためにこれらの筋肉をすべて骨からはがして手術が行われていました。

 2001年以降、これらの筋肉を極力温存し筋肉を骨からはがさない手術を取り入れて手術を行います。

 これは東京歯科大学市川病院整形外科の白石建教授が考案した手術法で、白石式アプローチと呼ばれています。

筋肉を温存することのメリット

1)手術後の痛みが少ない

 骨の付着部で筋肉をはがすと筋肉の萎縮(弱くなってしますこと)がおこり首の痛みの原因となります。また残っている筋肉に負担がかかりすぎて頑固な痛みをおこす場合があります。

 従来の筋肉を骨からはがず手術方法ですと20%程度の患者様に術後の首の痛みのために薬物や理学療法が必要でしたが、筋肉温存方手術を導入して以降は2~3%程度です。

 術後の痛みが少ないので翌日から立って歩くことができ、早期離床、早期退院、早期社会復帰が可能です。

2)手術後の運動制限が殆どない

 手術後も筋肉が元通りに働き、首の安定性が保たれていますので手術後の装具(カラー)装着は不要ですし、基本的に頚には何の運動制限はありません。

3)出血量が少ない

 筋肉を傷つけないので、出血は非常に少なくてすみます。

4)くびの姿勢がくずれにくい

 正常な頚椎は横から見ると前に凸のカーブを描いていますが、くびの後ろの筋肉がうまく働かないと、カーブがゆるくなってまっすぐに近くなり、首の姿勢が悪くなってきますきます。

 首の姿勢と痛みとの関連はまだ明らかではありませんが、従来の手術に比べて術後の首に形のかたちの変化はあきらかに少ない傾向にあります。

 本手術は安全かつ正確な操作を行うために顕微鏡を使用します。顕微鏡を使った手術は誰にでもできる手術ではなく、経験をつんだ医師でないとできません。

 本グループの志津医師、花村医師は、現在も定期的に白石教授のグループと勉強会を行い日々さらに洗礼された低侵襲手術をめざすべく努力をしています。

頚椎前方固定

 頚椎前方固定は首の斜め前から椎間板を取り出して骨を植えることで頚椎の支持性を再獲得する手術です。必要に応じて神経を圧迫している椎間板や骨を取り除いて神経の除圧と固定を同時に行います。この手術では、植えた骨を癒合させることにより首や背中の痛みを軽くすることや、神経に対する圧迫を取り除いて手や足の症状を軽くすることができます。また、この手術は、余計な骨が神経の前の部分にできて神経を圧迫する後縦靭帯骨化症で、神経を圧迫している余計な骨を取り除く場合にも使われます。

 頸椎を固定した部分に特にしっかりした内固定が必要な場合や、骨癒合が危ぶまれる場合には、プレ-トやスクリュ-などの金属を使って頚椎の内固定を追加します。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。

胸椎後方除圧手術(胸椎椎弓切除、椎弓形成手術)

 背骨のうちの背中の部分を胸椎と呼びます。胸椎後方除圧手術(胸椎椎弓切除・椎弓形成)は胸椎の後方部分を切除する手術です。

 椎弓切除は背骨の後ろの部分を全部取り除く手術です。椎弓形成は後ろの部分の骨を一部残して支持性が低下しにくいように工夫した手術です。いずれの手術を行うかは、病気の種類や、手術が必要な範囲によって決まります。

 この手術が利用されるのは、椎間板へルニアや後縦靭帯骨化症のように前方から脊髄を圧迫する病気のほか、化膿性脊椎炎・結核性脊椎炎で脊髄が圧迫される病気、脊柱管内に生じた血液の塊(血腫)による脊髄の圧迫、黄色靭帯骨化症のように後ろから脊髄が圧迫される病気など、多種の病気におよびます。また脊髄腫瘍のように脊髄への操作が必要な場合に、まず、脊髄に到達する手段をしても用いられます。


精神疾患や行動に関する研究

 脊髄は硬膜と呼ばれる比較的丈夫な管のなかで水に浮かんでいる状態になっています。圧迫されている部位では水の余裕が少なくなって脊髄が直接に圧迫されます。この手術の目的は脊髄に対する圧迫を少なくすることです。脊髄が圧迫されていることから麻痺が出ている場合には除圧のみで手術の主な目的は達成されます。

 しかし、病気の種類によっては、後ろからの圧迫のみではなく、脊髄が圧迫されてその上、ゴリゴリこすられているために症状が出ている場合があります。その場合は背骨と背骨の間の動きを止めなくてはいけませんので、背骨の固定をする必要が出てきます。金属を使って背骨を固定します。ふつうの場合、チタン合金製のネジ釘(ペディクルスクリュー)を使います。

 後縦靭帯骨化症のように前から脊髄が圧迫されている場合には、脊髄の左右から前のほうに骨を取り足して、前へ回り込んで、脊髄を前方から圧迫している骨を取り除くことが必要です。

 普通の場合、手術の翌々日から歩行できます。

脊柱側弯症や後弯症などの脊柱変形矯正手術(後方法)

 背骨がつながっている状態を柱に見立てて脊柱と呼んでいます。生理的な脊柱の弯曲とは、背中では後ろ凸、腰では前凸の弯曲があり、前から見るとまっすぐな状態です。この生理的な弯曲が前あるいは後ろに曲がり過ぎたり、横に曲がった状態を脊柱変形と呼んでいます。

 この手術の目的は、脊柱変形を矯正固定することにより側弯や後弯の進行を止めること、脊柱変形による疼痛を軽減すること、脊柱変形の結果として生じた神経の麻痺を改善させることです。

 高齢の方で背骨が後ろに大きく曲がりますと(ねこぜがひどくなりますと)、逆流性食道炎や腸閉塞などの内臓の障害が起こることは良く知られています。

 チタン合金製のスクリュー、フック、長い棒などを使って背骨の配列を正常に近い状態にします。必要に応じて椎間板や背骨の一部を切り取って背骨の配列を治すことも必要になります。

 そののち手術範囲から採った骨や、必要に応じて骨盤から採った骨を、矯正した範囲の背骨の背中側に植えて、将来は骨がついて背骨を支えることになります。金属は、骨がついて体を支えられるようになるまでの期間、体を支える役割を果たします。

 キズは背中に縦にできます。中年以降では骨の強度が弱くなっていることが多く、骨が金属に負けてしまうために、あまり大きな矯正は望めません。腰骨の脊柱変形の場合には椎間板を取って変形を矯正しやすくする場合があります。

 手術後に体幹装具が必要な場合と必要でない場合があります。若い方では骨が丈夫で粘りがあることから、多くの場合、装具は必要ではありません。中年以降の方では骨の強さが十分ではないことが多いことから骨が金属による矯正に負けることがあり、多くの場合、装具が必要です。

 普通の場合、手術の翌々日から歩行できます。

脊柱変形矯正手術(前方法)

 背骨がつながっている状態を柱に見立てて脊柱と呼んでいます。生理的な脊柱の弯曲とは、背中では後ろ凸、腰では前凸の弯曲があり、前から見るとまっすぐな状態です。この生理的な弯曲が前あるいは後ろに曲がり過ぎたり、横に曲がった状態を脊柱変形と呼んでいます。

 この手術の目的は、脊柱変形を矯正固定することにより側弯や後弯の進行を止めること、脊柱変形による疼痛を軽減すること、脊柱変形の結果として生じた神経の麻痺を改善させることです。

 キズは体の横に斜めにできます。

 金属による内固定がしっかりしている場合には体幹装具(コルセット)は必要ありません。体幹装具が必要な場合には、手術後1週間で採形し、1週間後にできあがった硬性装具を装着します。

脊髄腫瘍・馬尾神経腫瘍摘出手術

 脊髄腫瘍・馬尾神経腫瘍摘出手術は頸椎・胸椎・腰椎の後方部分を切除して神経を見えるようにしたのちに、脊髄や馬尾神経を圧迫している脊髄腫瘍・馬尾神経腫瘍を取り除く手術です。

 脊髄は脳から出た神経の本幹で、馬尾神経は脊髄から出て尻尾の方向に向かう細い神経です。

 通常は背骨の後ろの部分を取り除いて手術を進めます(椎弓切除)。腫瘍が取りやすい大きさ・形であれば後ろの部分の骨を一部残して支持性が低下しにくいように工夫した椎弓形成で手術を進めます(椎弓形成)。

 この手術の目的は、後方から背骨の後方部分を切除して脊髄や馬尾神経を圧迫している腫瘍を取り除いて、背中・おなか・足に出ている神経症状を予防あるいは軽減させることです。

 脊髄が圧迫された場合の症状は、しびれだけの場合もありますが、さわった感じがおかしくなったり、うまく歩けなくなったりする場合もあります。排尿障害や排便障害が出る場合もあります。手術により、これらの症状がどの程度良くなるかは、腫瘍により脊髄や馬尾神経がどの程度圧迫されているかによります。

 腫瘍そのものの性質を知るには、摘出した腫瘍を調べることによってのみ可能ですので、手術で腫瘍をまず、摘出する必要があります。腫瘍の性質を確定するのは腫瘍の病理検査ですので、腫瘍が良性か悪性か、良性としても他の部位に転移・播種しやすいかどうかは腫瘍の実質を調べないと確定できません。

 脊髄腫瘍・馬尾神経腫瘍はゆっくりではありますが、徐々に大きくなりますので、神経症状が出た時点ですでに手術を受けるほうが良いと考えられます。

 馬尾神経腫瘍は腰椎高位にある腫瘍です。馬尾神経腫瘍の場合にも周囲の神経との癒着をはがしながら腫瘍を取り除きますので、神経を痛めないようにするために繊細な操作が必要になり、手術用の顕微鏡を使って手術を進めます。

経皮的におこなう椎体形成手術

 背骨は周りが固い骨で、真ん中は比較的スカスカな状態です。したがって、ひとたび折れて周りの固い骨がくいちがってしまうと体を支えることができなくなり、その後も徐々につぶれます。骨が弱い方(骨粗鬆症)では特にこの傾向が強く出ます。この手術の目的は背骨の中にセラミックなどを入れて背骨の内部を丈夫にして、更につぶれるのを予防することです。

 全身麻酔あるいは硬膜外麻酔で、背中の皮膚を左右で約1cm切り、背骨の後ろからパイプを刺入します。そのパイプを通して背骨の中心部に顆粒状のセラミック(ハイドロキシアパタイト)や、粘性のあるベータピーシーピーなどをつめます。手術時間は1-2時間ですが、背骨の骨折に行われる手術としては、規模が小さい手術です。大きく切開しないため、身体に対する影響が少なく、通常は手術後にもそれほどひどい痛みはありません。

 普通の場合、手術の翌日から歩行できます。

ミエログラフィー(脊髄造影)

 背骨の病気で神経が圧迫された結果、痛み・しびれ・麻痺などの症状が出ている場合に、その原因になっている神経の状態を詳細に見て、今後の治療・手術の部位・方法を決める参考にするための検査です。

 点滴を行ないます。体位は側臥位で、腰・背中を曲げてえびのような姿勢になります。針の刺入部を中心に消毒します。腰の後ろから針を刺し、神経が通ってている硬膜管内に造影剤を注入します。頭を下げて足を上げるなどの操作で、造影剤を目的の部位へ移動させたのち、レントゲン写真とCT(輪切りのレントゲン写真)を撮ります。


ディスコグラフィー(椎間板造影)

 腰痛や下肢痛などの症状の原因になっている椎間板の状態を詳細に見て、今後の治療・手術の部位・方法を決める参考にするためです。

 治療の目的で椎間板内に局所麻酔剤とステロイドホルモンなどの薬物を注入する場合があります。

 点滴を行ないます。体位は側臥位で、腰・背中をやや曲げた姿勢になります。針の刺入部を中心に消毒します。X線透視をしながら腰の横後ろから針を刺し、椎間板に造影剤を注入します。治療を目的にしている場合には、椎間板内に薬物を追加注入します。レントゲン写真(CT)を撮ります。

選択的神経根造影・ブロック

 症状の原因になっていると考えられる神経根の周囲に造影剤や薬物を注入して、その神経根が殿部痛や下肢痛の原因かどうか確認するため、および、神経根の状態を詳細に見て、今後の治療・手術の部位・方法を決める参考にするための検査です。治療の目的で神経の周りに局所麻酔剤とステロイドホルモンなどの薬物を注入する場合があります。

 点滴を行ないます。体位は側臥位あるいは腹臥位になります。針の刺入部を中心に消毒します。X線透視をしながら腰に針を刺し、神経根の周囲に造影剤を注入します。神経を刺激するためにやや痛みを伴います。治療を目的にしている場合には、神経根の周囲に薬物を追加注入します。レントゲン写真(CT)を撮ります。

仙骨裂孔ブロック・硬膜外ブロック

 症状の原因になっている神経の周囲に薬剤を浸潤させて疼痛を軽減させるために行ないます。

 点滴を行ないます。体位は腹臥位あるいは側臥位で、側臥位に場合は腰・背中を曲げた姿勢になります。針の刺入部(殿裂下部)を中心に消毒します。腰の後ろから針を刺し、硬膜外腔に薬剤を注入します。注射後は15分程度、横になったままでいてもらいます。

中井定明: 脊椎・脊髄損傷に対する牽引療法, 骨折外傷シリーズ4 脊椎の外傷 その2, 大谷清, 115-121, 南江堂,1986

中井定明ほか: 腰椎分離症・すべり症へのinstrumentationへの応用, OS NOW Orthopaedic Surgery No.4 Spinal Instrumentation, 金田清志, 126-135, メジカルビュー社, 1992

中井定明ほか: 腰椎椎間板ヘルニア手術の合併症と対策, OS NOW Orthopaedic Surgery No.7 脊柱・骨盤の手術合併症と対策, 金田清志, 118-127, メジカルビュー社, 1992

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市瀬彦聡 中井定明ひか: 術前に多量の貯血をおこなった自己血輸血, 整形外科自己血輸血実践マニュアル, 中井定明 土井一輝 西島雄一郎 奥津一郎 佐々木孝 籐哲, 15-19, 全日本病院出版会, 2000

中井定明: 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的髄核摘出, 最小侵襲整形外科入門, 土井一輝 中井定明 西島雄一郎 佐々木孝 籐哲, 193-207, 南江堂, 2000

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中井定明: 先天性側弯症, 図説・腰椎の臨床, 戸山芳昭, 191-195, メジカルビュー社, 2001

中井定明: 特発性側弯症, 図説・腰椎の臨床, 戸山芳昭, 196-200, メジカルビュー社, 2001

中井定明: 成人側弯症, 図説・腰椎の臨床, 戸山芳昭, 201-204, メジカルビュー社, 2001

中井定明: その他の側弯症, 図説・腰椎の臨床, 戸山芳昭, 205-209, メジカルビュー社, 2001

中井定明:職業性腰痛, 今日の治療指針 2002年版, 山口徹 北原光夫, 638, 医学書院, 2002

中井定明:インストゥルメントの機種別手術手技 エクシアスパインシステム, 脊椎インストゥルメンテーション 基本手技とチェックポイント, 鈴木信正 中原進之介 野原裕, 63-65, メジカルビュー社, 2002

中井定明:分離すべり症, 脊椎インストゥルメンテーション 基本手技とチェックポイント, 鈴木信正 中原進之介 野原裕, 122-123, メジカルビュー社, 2002

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中井定明:腰椎固定術 A後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)、B腰椎後側方固定(PLF).整形外科インフォームドコンセントとパス,松井宣夫 出沢 明,209-215,中外医学社,2002

中井定明:機能性側弯(症).今日の整形外科治療指針 第5版 二ノ宮節夫ら編集.医学書院.630-631.2004

中井定明 志津直行ほか:腰椎変性疾患における固定術の適応を問う 腰部脊柱管狭窄症において除圧に固定を併用する意味. 腰椎変性疾患 基本知識とチェックポイント. 鈴木信正 中原進之介 野原 裕 編集.260-265.メジカルビュー社. 2004

中井定明:脊柱側弯症.2005年今日の治療指針.山口 徹、北原光男編.732.医学書院.2005

中井定明:腰椎後方椎体間固定術.リスクマネジメント脊椎手術.伊藤達雄・米延策雄・戸山芳昭編.229-238.南江堂.2005

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