胸痛(胸の痛み)の話 - Shinada Clinic Blog
胸痛(胸の痛み)の話
「胸が痛い」というときに、痛みがおきる原因を、その部位別に大きくわけると以下のようなものがあります
1:胸壁(きょうへき):ひふ 肋骨 筋肉、鎖骨、肋間神経など
2:肋膜(ろくまく):肺の表面にある うすい膜
3:心臓および大動脈
4:消化器:食道 (胃 その他)
5:心因性
以下、それぞれにつき、お話します。
1:胸壁(きょうへき)からくる胸の痛み
胸の痛みがおきる場所としては、最も多い場所です。胸壁というのは、胸を形成している筋肉、肋骨(鎖骨)、肋間神経、皮膚等が含まれます
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(1)肋間神経痛
肋間神経痛は、よくいわれる病気ですが、多くは原因が不明です。一般に天候が悪いときにみられるズキズキするような、「うずく」ような痛みです。側胸部(胸の横)に痛みが多い傾向にあります。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、全身のどこでもおきます。
水痘(水ぼうそう)のウイルスが、体の神経にひそんでおり、抵抗力が弱ったときに、活発となり、発症します。胸部にでることも多く、肋間神経にそって帯状の水疱をともなった湿疹ができるのが特徴です。湿疹がみられれば診断は容易ですが、時に痛みが先行し、湿疹があとになってみられることがありますので、クリニック受診時に湿疹がでていなくても、帰宅してから出てくるような場合には、再度、診察をうけて下さい。
帯状疱疹と診断された場合は、できるだけ早い時期に、ウイルスの薬を飲むことが必要です。年齢をとってから、発症した場合には、肋間神経の痛みが残る場合があります。また帯状疱疹は、からだの免疫が落ちた場合に発症しますので、帯状疱疹にかかった場合は、他の病気、特に癌の発生に十分注意することが必要です。
(2)筋肉痛
胸部には、厚い筋肉がいくつかあり、筋肉痛はどの部位からでもおきます。呼吸するとき、咳をしたときに痛むことが多いものです。
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(3)肋骨および肋軟骨の痛み
前胸部(胸の前方)で時々みられる痛みに、軟骨部の痛みがあります。胸の前にある板状の骨である「胸骨(きょうこつ)」と肋骨の間には、柔らかい軟骨の部位があります。この部位は、肋骨のようにレントゲン写真では写りません。特に痩せ型の人は、弱い部位であり、軽い外傷や、時には咳をしただけでも、「ひび」がはいることもあります。通常、痛い部位を押すと その部位に一致して痛みがみられます。
まれには、肋骨由来の腫瘍や、全身疾患のひとつの症状として、胸痛をおこす疾患もあります。
■「胸壁からくる痛み」の治療と注意点
胸壁からの痛みに対しては、鎮痛剤が処方されることが多いですが、からだを動かしたり、咳をしたときなどの、物理的な刺激による痛みは、鎮痛剤ではとれません。肋骨骨折がある場合は、バストバンドで胸壁を固定します。
軟骨部の痛みは、なかなか固定が困難です。痛みがとれるまで重いものをもたない、胸壁をひねるような運動はひかえる、等により通常2−3週間で痛みがおさまります。
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2:肋膜(ろくまく)の痛み
肺の表面には肋膜(ろくまく)といわれるうすい膜があります。肺実質は痛みを感じませんが、肋膜には痛覚(つうかく)の神経があり、痛みを感じます。
肋膜から痛みがおきる原因としては、肋膜炎や、肺が虚脱することによる自然気胸が代表です。
自然気胸は、痩せ型の若い(10代後半から20代)男子に多い病気で、肺に小さな穴があくことため、肺がちぢんでしまいます。原因は、肺の表面にブラ、とよばれる小さな風船が、できておりこれがパンクして、肺から空気がもれることによって発症します。肺が縮む時に、「肺表面の肋膜がひっぱられる」 ため胸痛がおきますが、肺が小さくなると、空気がもれていた穴も通常自然にふさがってしまうため、それ以上肺は小さくならず、胸痛もとれてしまうことが多いようです。ただ、穴が大きいと肺は完全に小さく縮んでしまい、呼吸困難になります。
エコノミー症候群ともいわれている肺梗塞(はいこうそく)は、肺の血管がつまる病気ですが、この場合にも急激な胸の痛みをともなうことがあります。つまった範囲がひろいとやはり呼吸困難におちいります。
肺癌も「胸の痛み」で発見されることがありますが、この場合も肺にできた「癌」が、肋膜あるいは、肋骨まで達したときにおきる痛みであり、初期には痛みはおきません。
■肋膜由来の胸の痛みの診断
これらの肋膜から発生する胸の痛みの場合は、胸部レントゲン写真あるいは胸部CT検査が非常に有用です。治療は、それぞれの疾患にあった治療をおこないます。
3:心臓および大動脈からの痛み
心臓由来の痛みは、狭心症あるいは心筋梗塞です。どちらも心臓にいく血液の流れが悪くなる、あるいはとだえてしまうことによりおこる痛みです。
「心臓は左」と思われている方が多いと思いますが、狭心症あるいは心筋梗塞の痛みは、胸全体が圧迫されるような漠然とした痛みのことが多く、範囲が広い場合、特に心筋梗塞の場合は呼吸困難からショックに陥ることがあります。
心臓からでている太い血管が大動脈です。大動脈瘤破裂、あるいは大動脈の壁がさける解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)は、胸部特に背部の激烈な痛みをともないます。血圧が下がる急性ショック状態におちいることが多く、最も緊急治療を要する疾患です。
その他、まれですが、心臓からくる胸痛としては、心臓をおおっている膜である「心膜」に炎症がおき、心臓の膜の中に水がたまる心膜炎があります。
■心臓からくる痛みの診断
これら心臓からくる痛みの診 断には、胸部レントゲンに加え、心電図が有用ですが、狭心症の場合、クリニックに来院したときは症状がとれていることも多く、この場合は、自宅で24時間心電図をつけるホルター心電図をおこない、1日の変化を観察します。
解離性大動脈瘤は、血圧が下がったりしてショックをおこす疾患ですが、はがれた大動脈の壁が、ふさがると症状が一時的に安定することがあり、診断に迷うこともあります。疑いがある場合には、胸部CTあるいはMRIによる検査が必要です。
4:消化器(食道)からくる胸痛
胸部の後ろには、食べ物の通路である「食道」が通っています。食道由来の痛みも、やはり胸の痛み、あるいは背部の痛みとしておきます。最近多い病気に逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)があり、胃液が逆流することによる「胸やけ」がみられます。
その他、胃や胆嚢の痛みも、時に胸部に放散することがあり、特に胆石発作の痛みが、肩のほうまでおよぶことがあります。
■消化器由来の痛みの診断と治療
消化管の痛みは、胃内視鏡検査あるいは腹部の超音波検査が必要ですが、逆流性食道炎の場合は、胃酸をおさえる薬がよく効きますので、薬をのんで効果があるかどうかを判断することも必要になります。
5:心因性の痛み
以上の器質的な痛み以外に、心因的な要因による胸の痛みがありますが、この場合は、「持続する胸の重苦しさ」を訴える方が多いようで、運動や咳とは無関係におきます。
■原因不明で、心因性の要因が強いと考えられる場合は、軽い安定剤を処方することもあります。
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